商工会議所などで6カ月以上の経営指導を受けた事業者は、日本政策金融公庫によるマル経融資を受けられる可能性が出てきます。ここでは、無担保・無保証で利用できる融資制度であるマル経融資制度について、その概要と利用のメリット・デメリットについて説明していきます。
マル経融資の概要
マル経融資は正式名称を「小規模事業者経営改善資金融資」といい、無担保・無保証で運転資金と設備投資資金を借り入れることができるものです。特に資金面で余裕のない個人事業主や小規模事業者にとっては非常に心強い融資制度となるので、まずはマル経融資の概要から理解していきましょう。
マル経融資の使用使途
- 運転資金:従業員の給与などの支払い資金、仕入れ資金などとして
- 設備資金:社用車の購入、店舗や工場の改装あるいは機械設備の導入費として
対象者
- 宿泊業・娯楽業を除くサービス業や商業を主たる事業としており常時使用従業員数が5名以下(それ以外は従業員数20名)である事業者
- 商工会議所または商工会地区内で直近1年以上にわたり事業を営んでいる事業者
- 商工会議所または商工会で6カ月以上の経営・金融指導を受け事業の改善に取り組んでいる事業者
- 各種税金を滞納していない事業者
- 日本政策金融公庫が指定する非対象業種などに属していない業種の事業者
利用条件
- 貸付限度額:2,000万円
- 返済期間:運転資金については7年以内(据え置き期間は1年以内)、設備資金については10年以内(据え置き期間は2年以内)
- 担保・保証人:不要
- 利率:年1.21%
マル経融資を利用するメリットとデメリット
商工会議所または商工会の指導を受けることが前提となっていますが、無担保・無保証で貸し付けを受けられるマル経融資は、事業者にとってメリットが高いといえます。一方、条件に該当しなければマル経融資の恩恵を受けることはできません。ここでは、マル経融資利用のメリットとデメリットについて説明します。
マル経融資を利用するメリット
マル経融資を利用する最大のメリットは、その金利の低さに加え、無担保・無保証で借りることができる点にあります。
利率は日本政策金融公庫で定められているものの中でも特に低い「特別利率F」が適用され、年利1.21%となっています。一般的な民間金融機関の場合、融資における利率は日本政策金融公庫に比べるとはるかに高く、年利14.5%前後の設定となるので、いかに良心的な条件で融資を受けることができるかがわかります。
無担保・無保証という条件も他の金融機関にはない特徴ですが、代わりに商工会議所または商工会による推薦を受けなければなりません。推薦を得るためには、一定期間以上の指導を商工会議所または商工会から受ける必要がありますので、あらかじめスケジュールを組んだうえでマル経融資を利用することをお勧めします。
マル経融資を利用するデメリット
資金面や保証人、担保の面で、小規模事業者による利用のハードルが低く設定されているマル経融資ですが、必ずしもメリットばかりではありません。即日融資に対応しているわけではなく、また貸し付けを受けるための条件もあるからです。
マル経融資を利用するためには、創業から1年以上継続して事業を行っている前提が不可欠なのです。例えば、事業者としては年数を重ねていても、その間に異業種の事業歴が複数あるような場合、「継続して事業を続ける」というひとつの目標に合致しないことになるため、審査担当者の心証は決して良くないことが想定されます。
個人事業主や小規模事業者であるほど、「できるだけ早く資金を手にしたい」というニーズが高いものです。しかし、マル経融資は即日融資に対応していませんので、あらかじめ理解しておきましょう。すでに述べた通り、商工会議所または商工会による推薦を得て初めて、制度利用資格のひとつを満たすことになりますが、推薦を受けられるかどうかは商工会議所または商工会による調査・審査が必要なのです。経営指導を行うのも、継続的な事業を可能にするための事前準備と言い換えられますし、将来的な返済能力をより高めることにも繋がるといえます。
まとめ
資金繰りの問題は、個人事業主や小規模事業者なら特に大きな懸念事項になりますから、事業を育て拡大していくためにも、事業計画をしっかり立て、商工会議所または商工会による指導の下で準備を進めていくことが大切です。
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