私立学校の設立と運営を目的とする学校法人には、一般企業における定款と同じく法人内でのルールを定める必要があります。ここでは、学校法人の寄附行為(法人内ルール)について説明していきます。
寄附行為は定款と同じ役割を持つ
一般的な会社では定款により社内ルールを定め、健全運営を心がけています。学校法人も法人内の決め事に沿って運営していく必要があり、これを定めたものを寄附行為とよぶのです。
寄附行為という名称がなぜついたか、その理由には諸説ありますが、かつて学校法人が財団法人として扱われていたことに由来するといわれています。財団法人は拠出者からの寄附を主たる財源とし、寄附された財産を法人運営に活用していきます。財団法人の一種であった学校法人もこの考え方に基づき、「寄附をもとに法人運営・事業活動を行うためのルール」を寄附行為とよぶようになったようです。
寄附行為の記載事項
学校法人における寄附行為には、法人としての活動目的や名称、諸愛知、資産などさまざまな決め事が記載されます。具体的には、法で定められた絶対的記載事項と法人が任意で加えることのできる任意記載事項で寄附行為を構成します。
絶対的記載事項
私立学校法第30条によれば、絶対的記載事項として次に挙げる事柄を記載することとしています。
一 目的
二 名称
三 その設置する私立学校の名称及び当該私立学校に課程、学部、大学院、大学院の研究科、学科又は部を置く場合には、その名称又は種類
四 事務所の所在地
五 役員の定数、任期、選任及び解任の方法その他役員に関する規定
六 理事会に関する規定
七 評議員会及び評議員に関する規定
八 資産及び会計に関する規定
九 収益を目的とする事業を行う場合には、その事業の種類その他その事業に関する規定
十 解散に関する規定
十一 寄附行為の変更に関する規定
十二 公告の方法
※私立学校法第30条より抜粋
同法31条によれば、学校法人が設立申請を行うに際し、所轄庁は以下の事柄を審査し認可の決定を行うこととしています。
- 施設および設備の整備
- 施設および設備の整備に必要な財産の保有状況
- 法に照らし合わせた寄附行為の確認 など
寄附行為に変更が生じたら
たとえば学校法人が収益事業を行おうとする場合、どのような事業をどのようなルールのもとに営むのかを寄附行為に明記する必要があります。したがって、すでに寄附行為が存在する状態で新たに収益事業を行う場合は寄附行為を変更しなければならず、あらためて所轄庁から認可を得ることになるのです。私立学校法第45条では以下のように定めています。
第四十五条 寄附行為の変更(文部科学省令で定める事項に係るものを除く。)は、所轄庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 学校法人は、前項の文部科学省令で定める事項に係る寄附行為の変更をしたときは、遅滞なく、その旨を所轄庁に届け出なければならない。
※e-Gov「私立学校法」より抜粋
収益事業を行うことを理由として寄付行為を変更する場合は、次の手続きが必要になります。
- 評議員会の開催
- 理事会の開催
- 収支計算書の作成
- 図面の作成 など
まとめ
寄付行為は関連法に則って正しく作成する必要があり、寄附行為を変更する際も法に基づく手続きを行わなくてはなりません。いずれも正確性が求められると同時に煩雑さも伴うため、一般的には専門家に依頼することが多いといえます。
学校法人を設立するためには、行政書類の作成・提出、寄附行為の作成や変更、所轄庁との度重なるやり取りなど、煩雑かつ時間のかかる手続きをこなす必要があります。設立関連業務はほかにも多々ありますので、重要な手続きをいかにスムーズに進めるかが重要になってくるでしょう。
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