2006年の新会社法により、合同会社という新しい会社形態が生まれました。日本では株式会社の方が多勢を占めていますが、アップルジャパンやアマゾンジャパンなどの大手企業もメリットの大きい合同会社を採用していることから、今後日本国内での合同会社数は増えていくことが予想されます。ここでは、合同会社を設立するメリットについて説明していきます。
合同会社の特徴と概要
経営者が出資者でもある合同会社では、すべての社員が有限責任を負っているという点が特徴的です。有限責任とは、万が一、会社が倒産するなどした場合、自分が出資した金額以上の負債を背負う必要がないことを意味します。仮に会社が1千万円の負債を抱えて倒産したとしても、1人の出資者(社員)の出資額が100万円だった場合、出資額である100万円については責任を負わなければなりませんが、残る900万円の負債を背負う必要がありません。
合同会社の設立費用
株式会社にも合同会社にも定款と登記にまつわる費用がかかりますが、合同会社の方が安く済む点が特徴的です。法定費用である定款認証費用と法人登記費用について比べてみましょう。
【株式会社の場合】
印紙代:40,000円(紙の定款)/0円(電子定款)
公証人による定款認証手数料:資本金額に応じ30,000円から50,000円
登録免許税:150,000円か資本金額の0.7%のどちらか高い額
登記簿謄本の取得費用:取得枚数による
【合同会社の場合】
印紙代:40,000円(紙の定款)/0円(電子定款)
公証人による定款認証手数料:0円(合同会社の場合認証の必要なし)
登録免許税:60,000円か資本金額の0.7%のどちらか高い額
登記簿謄本の取得費用:取得枚数による
会社の資本金額にもよりますが、株式会社より合同会社の方が費用負担は小さく済むことがわかります。
合同会社を選択するメリット
出資者が有限責任社員であるという特徴に加え、合同会社の設立には以下のようなメリットがあります。
決算公告義務がない
会社法によれば、株式会社には決算公告(貸借対照表の公告)が義務付けられています。広告の手段は3つあり、日刊新聞紙・電子公告・官報のいずれかの方法を選択します。日刊新聞紙の場合、広告を出すと数十万円もの費用がかかるため、自社ホームページ上で情報公開する会社が多い傾向があります。また、官報公告を選んだ場合は、年間60,000円ほどの費用が必要です。
これに対し、合同会社には決算公告の義務がありません。したがって公告のための費用を抑えることができます。
節税対策になる
たとえば個人事業主の場合、累進課税制度が適用されますので、所得が多くなるほど納めるべき税額も増えることになります。しかし、合同会社の場合は法人税が適用されますので、売上額が大きくなるほど個人事業主と比べてメリットを享受しやすいのです。
国税庁ホームページによれば、資本金1億円以下の企業について、年間800万円以下に該当する法人の場合、その法人税率は15%となっています。同じ所得金額でも個人事業主の場合は所得税率が23%であるため、大きな節税効果が期待できそうです。
利益配分の自由度が高い
株式会社の場合、出資者の持ち株数により配当額が変わりますが、合同会社の場合は定款の定めにより自由に利益配分の在り方を決めることが可能です。出資者が社員でもある合同会社では、会社への貢献度により配分を高くすることもできるので、社員のモチベーションアップと上手に絡めて利益配分の仕組みを作るのもいいでしょう。
意思決定までのスピードが早い
株式会社では、会社の経営方針などについて、経営トップの判断だけではなく株主総会で株主の意見も聴きながら方向性を決めていく必要があります。時間とお金がかかることから、決してスピーディーだとは言えない側面があるのです。
一方、合同会社であれば、出資者が経営者でもあるため株主総会を開く必要がなく、現場の状況に合わせた速やかな意思決定が可能な点は大きなメリットだといえるでしょう。
まとめ
今回は合同会社のメリットについてお伝えしてきました。デメリットも存在するものの、これから事業をスタートしたい人や節税・意思決定経路に関する意識が高い人の場合は、合同会社という形態を選ぶのも一つの策だといえます。
当事務所では会社設立に関するご相談をお受けしており、特に「会社設立+許認可申請」を合わせて依頼される方が多い傾向にあります。事業を始める場合、その業界ごとに許認可が必要なケースもありますので、まずは無料相談で会社設立に向けた情報整理を行ってみることをおすすめいたします。