医療法人が解散する背景には、後継者問題や経営事情の悪化など、さまざまな理由が考えられるでしょう。ここでは、医療法人の解散に伴う北海道での手続きについて説明していきます。
法に定められた解散事由
医療法第55条によれば、医療法人は次に挙げる事由に基づき解散します。なお、地域医療の安定性を維持するためにも、できるだけ解散せずに済むよう努力が求められていますので、解散は最終選択肢であることがわかります。
社団医療法人の解散事由
【社団医療法人】
医療法では、社団医療法人の解散について以下のように定めています。
第七節 解散及び清算
第五十五条 社団たる医療法人は、次の事由によつて解散する。
一 定款をもつて定めた解散事由の発生
二 目的たる業務の成功の不能
三 社員総会の決議
四 他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。次条第一項及び第五十六条の三において同じ。)
五 社員の欠亡
六 破産手続開始の決定
七 設立認可の取消し
※e-Govより抜粋
【財団医療法人】
また、財団医療法人については、第55号3号で解散事由が明記されています。
3 財団たる医療法人は、次に掲げる事由によつて解散する。
一 寄附行為をもつて定めた解散事由の発生
二 第一項第二号、第四号、第六号又は第七号に掲げる事由
※e-Govより抜粋
第一項第二号、第四号、第六号および第七号とは、社団医療法人の解散事由に定められた項目と同一です。
- 第二号:目的たる業務の成功の不能
- 第四号:他の医療法人との合併
- 第六号:破産手続開始の決定
- 第七号:設立認可の取消し
よくある解散事由
法に定められた解散事由のなかでも特に多いのが、医療法人が債務超過になった場合と後継者が見つからない場合です。
【債務超過】
医療法人を運営するためには、高額な医療機器をいくつも導入したり十分なスタッフを確保したりしなければなりません。特に医療機器については現金一括よりもローンで購入することが多いため、毎月の返済額が膨らむほど病院経営を圧迫していきます。
金融機関から融資を受けてやりくりすることもできますが、債務過多になり借り入れもできなくなったとき、医療法人の解散という選択肢が浮上してくるものと考えられるのです。
【後継者問題】
現代ではどの業界でも後継者不足が深刻になってきていますが、医療法人も例外ではありません。特に、医療法人の場合は後継者も医師免許を持つ人物でなければならないという定めがあることから、後継者候補が狭められ、解散も視野に入れた検討をせざるを得なくなることもあるのです。
北海道における医療法人解散手続き
北海道保健福祉部地域医療推進局医務薬務課のページには、医療法人の手引きとして解散手続きの必要書類や流れを確認することができます。
(※以下、北海道保健福祉部地域医療推進局医務薬務課ページ参照)
医療法人解散のための必要書類
医療法人を解散するためには、必要書類を揃えて事前審査を受ける必要があります。必要書類は次の通りです。
第七節 解散及び清算
(解散の認可の申請)
第三十四条 法第五十五条第六項の規定により、解散の認可を受けようとするときは、申請書に次の書類を添付して、都道府県知事に提出しなければならない。
一 理由書
二 法、定款又は寄附行為に定められた解散に関する手続を経たことを証する書類
三 財産目録及び貸借対照表
四 残余財産の処分に関する事項を記載した書類
※医療法施行規則より抜粋
また、北海道保健福祉部地域医療推進局医務薬務課のページから確認できる手引書によれば、解散の理由として、解散にいたった経緯や理由を具体的かつ詳細に記載することとしています。
解散手続きの流れ
解散認可申請のスケジュールは毎年発表されていますので、該当する年度の予定を確認しておきましょう。
※手引きでは「医療法人設立・解散認可スケジュール」と題されていますが、認可設立スケジュールを手本としています。このため、都合上、認可を解散と置き換えて流れを整理しています。
- 事前審査:道庁に申請
- 審査結果連絡:道庁から結果を通知
- 正式申請:保健所に対して申請
- 申請書進達:保健所から道庁に進達
- 医療審議会
- 解散認可書送付:道庁から保健所へ
- 解散認可書交付:保健所から申請者へ
- 解散登記:法務局で手続き
- 登記届:申請者が保健所に提出
解散認可後の手続き
- 解散認可書が交付されたら、解散登記とあわせて清算人就任登記も行います。
- 2ヶ月以内に合計3回以上の官報公告を行います。
- 清算登記が完了します。
まとめ
医療法人を解散する場合、一般的な会社の解散手続きに比べると非常に多くの書類や手続きが必要になります。そのひとつひとつを間違いなく作成し、もれなく所轄庁に提出するだけでも大変な労力がかかるでしょう。できるだけスムーズに手続きを進めるためにも、できるだけ早めに当事務所の無料相談をご利用ください。