現在、開業医として医療に従事している先生のなかには、遠くない将来の法人成りを検討している方も少なくないでしょう。ここでは、医療法人とはどういうものか、その特徴や種類について説明していきます。
医療法人とは
厚生労働省の資料によると、医療法人は次のように定義されています。
医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保
健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人です。
※厚生労働省資料より抜粋
法人化するためには、その設立に際して役員を設置し医療行為に必要な設備・施設を整え、一定以上の資産を持っていることを要件としています。また、管轄する都道府県知事に対して認可申請を行わなければなりません。
医療法人の性格
個人の開業医ではなく法人化する最大の目的は、医療体制の強化とそのために必要な資金の確保にあるといえるでしょう。医療に関する環境をより充実させることで、医療法に記載されているように、国民の健康保持に寄与することが求められているのです。
医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。
※厚生労働省資料より抜粋
医療法人の非営利性
医療は利益を追求するものではなく、あくまでも国民の健康を保持することを目的としています。したがって、医療法人の運営により得た所得のうち剰余金に該当する金銭は、その配当が法で禁じられているのです。
医療法人の種類
医療法人は、社団医療法人と財団法人に分けることができ、それぞれ異なる特徴を備えています。また、個人開業医と医療法人の間にも明確な区別がついているので、確認していきましょう。
社団医療法人と財団医療法人
日本における医療法人のうち、9割以上が社団医療法人といわれています。ここでは、社団医療法人と財団医療法人の特徴を比較していきます。
社団医療法人
人が集まって形成される社団医療法人は、その設立にあたり財産拠出・出資が求められており、その形態は会社と類似しているところがいくつもあります。議決機関として社員総会を設ける必要があったり、社員が株主に相当する立場だったりする点は、まさに会社組織と共通しているといえるでしょう。
【財団医療法人とは異なるところ】
- 定款作成が必要
- 財産拠出が求められる
- 社員総会により決議が行われる
財団医療法人
人の集まりによって社団医療法人が形成されるのに対し、財団医療法人の土台は寄付などにより集められた財産に依存します。
【社団医療法人とは異なるところ】
- 寄付行為に基づく組織である
- 財産は寄付に依存する
- 評議員会により決議が行われる
個人病院と医療法人
そもそも医療機関は、個人病院と医療法人に大別することができます。それぞれの主な違いについて整理しておきましょう。
個人病院
- 保健所および管轄する厚生局に対する届出が必要
- 登記は不要
- 分院の開設は認められない
- 5人以下の場合は社会保険への加入義務がない
医療法人
- 都道府県知事に対する認可申請が必要
- 登記が必要
- 分院開設が認められている
- 社会保険への加入義務あり
まとめ
個人開業医として医療に従事していくうち、安定的に利益を生み出せるようになってきたら法人化のタイミングと捉えていいかもしれません。法人化が視野に入ってきたときに考えなくてはならないこととして、以下を挙げることができます。
- 個人と法人ではどちらが医療として貢献できるか
- 個人と法人ではどちらの節税効果が高いか
- 法人化してからの安定経営は見込めるか
医師の先生がどのような将来像を描いているかによって、個人病院のままがいいか法人化した方がいいかが決まってきます。しかし、自分ひとりだけではなかなかその判断を付けにくいのも実情です。
将来像については各先生に委ねられるところですが、もし法人化を検討しようとお考えであれば、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。医療法人化するまでの流れや将来像をどのように実現していくかなど、設立業務はもちろん法的視点からの助言・サポートをさせていただきます。