医療法人に関する相続が起こった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。出資持分の有無によっても対応の仕方は変わってきます。ここでは、医療法人への出資者が持つ権利と相続問題について説明していきます。
持分ありの医療法人にかかわる相続
医療法人はその構成要素により医療法人社団と医療法人財団に分けることができます。日本で大勢を占める医療法人社団はさらに「出資持分のある法人」「出資持分のない法人」の2種類に分類されます。ただし、2007年の法改正により、それ以後は出資持分のある法人を設立できなくなったため、新設できるのは出資持分のない法人のみとなることを覚えておきましょう。
ただし、法改正前から存在した「出資持分のある医療法人」については引き続き運営することが認められています。また、出資持分のある医療法人に出資した人物の相続が起こった場合は注意が必要です。以下に挙げる財産返還請求権や解散時の残余財産分配請求権には財産的価値が認められており、課税対象となるので、被相続人が医療法人に出資していた場合は課税対象額がいくらになるか慎重に確認する必要があるでしょう。
財産返還請求権
出資持分のある医療法人では、出資者は出資比率に応じた財産返還請求権を有しています。したがって、出資者が医療法人から脱退する際は出資した財産相当分の払い戻し請求をすることができるのです。
解散時の残余財産分配請求権
医療法人の解散に際して出資者が脱退した場合、その出資比率相当分の残余財産分配請求権に基づき財産返還を請求することができます。
出資持分のある医療法人は剰余利益を出資者に分配することはできないため、出資者の財産は医療法人内に蓄積される形でどんどん膨らんでいきます。つまり、相続時には出資持分の課税評価額が多額になっている可能性があるので注意が必要です。
出資者の権利の相続と医療法人経営
医療法人への出資者が将来的に亡くなった場合、出資に関する各種の権利も相続対象となります。仮に相続人が権利を実行し、医療法人に対して出資分の払い戻しを求めた場合、法人にとっては大きな負債を抱えてしまいかねません。
このような事態を回避するためにも、厚生労働省は「持分のある医療法人」から「持分のない医療法人」への移行を呼びかけています。移行手続きは決して難しいものではなく、以下に挙げる要件を満たしたうえで、必要書類を正しく揃えて都道府県に提出すれば認定を受けることができます。
<運営方法>
- 法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと
- 役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること
- 株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
- 遊休財産額は事業にかかる費用の額を超えないこと
- 法令に違反する事実、帳簿書類の隠ぺい等の事実その他公益に反する事実がないこと
※厚生労働省資料より抜粋
認定を受けることができたら、再び必要書類を揃え所轄庁(厚生労働省)に提出し確認を経て「持分なし医療法人」への移行が完了します。ただし、厚生労働省が資料に記載している通り、移行制度には期限がありますので注意が必要です。
本制度の期限は令和5年9月30日までとなっており、本制度を利用する場合は当該期日までに移行計画の認定を受ける必要があります。
※厚生労働省資料より抜粋
まとめ
医療法人の相続税対策を行うためには、すでに述べた通り、法律や所轄庁による情報提供を正しく理解しなければなりません。特に、持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行制度には期限がありますので、税理士および行政書士とよく話し合って速やかに手続きを進める必要があります。
当事務所では、提携する税理士と協力しながらトータルサポートを提供することが可能ですので、まずは無料相談をご利用いただき、法人の現状やご不安な点などを整理するところから始めてみましょう。