NPO法人で働くスタッフは無給ボランティアなのでしょうか。実は、就労実態によって、一般的な会社と同様に有給の労働者として雇用契約を結ぶ必要があるのです。ここでは、NPO法人における雇用契約の在り方について説明していきます。
NPO法人におけるスタッフ雇用の注意点
NPO法人としての活動にはさまざまな事務作業が伴うため、多くの場合スタッフを雇用し事務局の仕事を任せています。非営利活動法人だからといってすべてのスタッフがボランティアであるとは限らず、スタッフを有給で雇用することもあるのです。NPO法人の主な収入源として以下の3つを挙げることができ、得た収入のなかからスタッフに給与あるいは報酬を支払います。
【NPO法人の主な収入源】
- 寄付:法人の活動内容や方針に賛同する個人・法人からの寄付金はNPO法人の財政を支えています。
- 収益事業収入:NPO法人であっても収益事業を行うことができますので、そこから収入を得ることができます。
- 会費:法人に属する会員からの会費収入は安定的な収入源となります。
NPO法人がスタッフを雇用する場合の注意点
法人形態がどのような形であれ、スタッフを雇用する場合は最低賃金以上の支払いが求められます。最低賃金に満たない金額の支払いまたは給与の未払いなどがあった場合、法に触れることも考えられますので、通常の企業などと同様にスタッフの雇用関係は整えておく必要があるのです。
また、雇用契約ではなく業務委託契約に基づいてスタッフを採用している場合、拘束時間や依頼する業務内容などにより、もはや労働者であるとみなされるケースもあるので注意しましょう。労働基準法が適用されることになるので、賃金や残業代の支払い、有給休暇の付与、各種保険への加入義務も発生します。
労働基準法の適用基準を確認
NPO法人自身がスタッフとの関係性をどう捉えるかではなく、労働の実態に基づいて結ぶべき契約の種類が変わります。業務委託契約は成果物に対して報酬が支払われるものであるため、常時雇用する場合は雇用契約が必要となり、労働基準法に基づく対応が求められるのです。具体的にどのような内容が適用されるのでしょうか。
雇用契約書
スタッフとNPO法人との間に雇用関係が認められる場合、労働条件通知書ともよばれる雇用契約書をスタッフとの間で交わす必要があります。雇用契約書では、労働時間や賃金といった重要事項が記載されていなければなりませんので、労働基準法に基づいた正しい契約書を作成しましょう。
法定労働時間
労働基準法の第32条によれば、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」としています。基準を超えて労働させた場合は、割増賃金を支払う義務があるだけでなく、NPO法人の代表者と過半数のスタッフとの間で、いわゆる36協定(サブロク協定)を締結し労働基準監督署に届出を行う必要があるので、あらかじめ確認しておきましょう。
最低賃金
NPO法人も一般的な会社と同様に、スタッフに対して最低賃金以上の給与を支払わなければなりません。北海道の最低賃金は、2022年10月2日時点で920円に改定されていますので、これと同等かそれ以上の賃金支払いが求められることになります。
就業規則作成
スタッフを10名以上雇用するNPO法人では、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければいけません。
このほかにも、休日規定や有給休暇規定など、スタッフを労働者として保護するためのさまざまな取り決めが必要になります。
まとめ
非営利活動法人であることで、スタッフが無給ボランティアであるという誤解が生じているのも事実です。しかし、NPO法人は一般的な会社と同様にスタッフを雇用することができ、また雇用した場合は労働基準法に則って正しく対応することが求められています。
当事務所では、NPO法人の設立業務のご相談・ご依頼を承っております。設立に伴いスタッフを雇い入れたい場合など、疑問や不安をお持ちの場合は、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。