新規創業の会社設立時期は特に、民間金融機関から融資を受けることが非常に難しいといわれています。このときお勧めしたいのが、日本政策金融公庫が提供する新創業融資制度です。ここでは、起業の際に受けることができる新創業融資について説明していきます。
融資の審査で注意したい自己資金の問題点
日本政策金融公庫では、会社設立前あるいは設立直後の事業者でも無担保・無保証で利用できる融資制度を提供しています。まだ実績がなく安定した売上も存在していない創業期ほど、お金が必要なものですから、事業者にとっては大変ありがたい制度だといえるでしょう。
審査を左右する重要ポイントは自己資金
設立直後でも無担保・無保証で利用できる点は非常に魅力的ですが、当然ながら申込に際して審査を受けることになります。審査で重要視されるといわれているのが、自己資金をどの程度持っているのかという点です。自己資金が少なければ借入額が増えますから、将来的な返済負担も大きくなることがわかります。一方、十分な自己資金を持っていれば、起業に備えて計画的にお金を貯めてきた過程も評価されますし、借入額も必要な分だけで済むことから、審査担当者の心証も良くなることが考えられるでしょう。
では、どの程度の自己資金を持っていることが望ましいのかといえば、創業時点で必要金額の10分の1以上であるとされています。つまり、起業に必要な総資金を10としたとき、自己資金が1、融資で調達する資金が9の割合になっていることがひとつの目安になるのです。ただし、これはあくまでも最低目安ですから、自己資金が2割~3割と増えるほど融資は受けやすくなるでしょう。
注意しなければならないのが、表面的に自己資金を多く見せる、いわゆる見せ金で申請してはいけないということです。申請に合わせて一時的に自己資金を多く見せようとしても、日本政策金融公庫では通帳の過去にまでさかのぼり審査しますので、見せ金のように直前になって急に残高が増えるようなケースには慎重になります。審査担当者の心証を悪くすることは、融資を受けるにあたり必ず避けたいことなのです。もし、タンス預金など口座で管理せず貯めてきたお金がある場合は、実際に起業するタイミングよりさかのぼって少しずつ預金の履歴を作っていった方が無難でしょう。
新創業融資制度を利用するための要件
新創業融資制度は、これから起業する事業者にとって、資金面での安心を獲得するためにぜひ活用したいものになります。制度を利用するためには、以下に挙げる条件すべてに該当する必要があります。
申請者要件
- これから起業する事業者あるいは起業後2期分の税務申告を終えていない段階の事業者
- 起業に際し必要となる資金の10分の1以上の自己資金を確認できる事業者
資金使途
- これから起業するため、もしくは起業直後に必要となる設備資金・運転資金として利用すること
- 融資限度額は3,000万円(運転資金の限度額は1,500万円)
このほか、返済期間は各々の契約に基づいて決められ、期限内に完済しなければなりません。また、無担保・無保証で利用できる融資制度になるため、借り入れを行う事業者はしっかりと資金管理を行い、返済を見越した事業展開を行っていく必要があります。
まとめ
起業するタイミングは最もお金を必要とするときでもあり、設備投資や運転資金は十分余裕をもった金額が手元にあることが望ましいといえます。しかし、これから起業する際に必要なだけの資金を用意できていることは逆に珍しく、多くの事業者が融資を利用して資金準備を行っています。
当事務所は会社設立のサポート依頼実績が豊富ですが、やはり資金の問題を抱えている事業者は多い印象があります。このため、日本政策金融公庫をどう活用すべきか、どの融資制度を利用すべきか相談を受けることも多々あるのです。日本政策金融公庫の融資制度の中でも新創業融資制度は起業する事業者にとって非常に便利なものですので、利用に不安のある方などはぜひ当事務所までご相談ください。