事業を行うためには、人材や設備、そして運転資金の確保が不可欠です。特に、日々の仕事を行い利益に繋げていくためには、運転資金の有無が重要な問題となってきますし、場合によっては借入により事業を行うための体力をつけることも必要です。ここでは、日本政策金融公庫から運転資金の融資を受ける際の目安について説明していきます。
運転資金の融資を受ける際の目安は約3か月分
事業を行うとさまざまな経費がかかりますが、それらの費用をまかなうためのお金を運転資金といいます。商品を生み出すために必要な原材料や販売のための仕入れ、人件費や家賃など、ほぼ固定的にかかってくるお金などが挙げられます。
売上の3か月分が融資の目安
事業において資金繰りは常に深刻な問題であり、いかに金銭的に余裕のある運営ができるかを左右する継続した課題であるといえるでしょう。しかし、ときにはスタッフを増員する必要に迫られたり、仕入れ値が上がったりして、運転資金が乏しくなることもあるかもしれません。そのようなときに運転資金の融資を受けることができれば、事業を圧迫する要素を減らし利益を出すことに集中していけるのだといえます。
運転資金の融資を受ける場合、いくらくらいを目安に考えればいいかという話をよく聞きます。当事務所ではご依頼者様の持つ背景事情などをヒアリングしたうえで適切なアドバイスを行いますが、「売上の3カ月程度」がひとつの区切りとなるケースが多いようです。この場合、1ヵ月の売上が50万円とすれば、運転資金として融資を受ける額の目安を150万円と計算することができるでしょう。「3カ月」は物事を安定させるときに必要な期間として使われる目安でもあるので、3か月分の運転資金を借り入れることができれば、事業基盤を揺るがすことなく安定を維持できる可能性が高くなるといえます。
「何にいくら必要か」を明確に
運転資金は必ずしも3か月分借りなければならない、というわけではありません。あくまでも現状を鑑みて、適切と思われる金額を融資してもらうことが理想的なのです。そのためにも、運転資金とひとくくりにするのではなく「何にいくら必要か」を明確にすることが大切です。ここでは、運転資金を構成する要素について挙げていきますので、どの項目について資金が必要か振り返る参考としてください。
必要経費の種類から融資額を考える
必要な融資額を具体的に見積もるためには、経費の種類を明確に理解・把握する必要があります。以下を参考に自社の運転資金の不足分を明確にし、過去の収支内訳書と照らし合わせながら必要額を算出していくといいでしょう。
(例)家賃の必要額を考える
毎月の家賃は12万円かかるが、事業を興してから数ヶ月は軌道に乗せるまでにかかる見通しである。このため、12万円×6ヶ月分=72万円を家賃としてとっておけたら安心して業務に従事できる。
(例)仕入れ費の必要額を考える
販売のための仕入れに月15万円はかかる。ただし販売サイトからの出勤は1ヶ月に1度のサイクルとして入出金管理したい。店舗の立地条件はいいため3ヶ月程度あれば仕入れ費用の回収も現実的になると見込んでいる。したがって、15万円×3ヶ月分=45万円を仕入れ費としてとっておきたい。
(例)人件費の必要額を考える
スタッフを1人雇って事業をよりスムーズに進めたいため、その給与として月額20万円が必要になる。仕事を覚えてもらい戦力となってもらうまでには約3ヶ月かかると見込んでいるので、20万円×3ヶ月分=60万円の資金があるといい。
以上のように、必要と考えられる経費について一つひとつ「なぜ、いくら必要になるのか」を明確にしていき、トータルで必要になる金額を導き出しましょう。このようにして将来的な収支計算表を仮で作成し、日本政策金融公庫の融資制度への申込みに使うのです。「だいたいこのくらいのお金が必要」という感覚ではなく、きちんと各要素について必要性を説明できるくらいにしておくことが、説得力ある収支計算表を作成するポイントになります。
まとめ
融資とはいえ借金であることから、借金を嫌う事業者などは借入れを避けてすべて自分の貯蓄だけでまかなおうとするかもしれません。すべての経費を自費でやりくりできれば、リスクも少なく借金を作らずに済むのですが、事業を始めてから軌道に乗せるまでに必要となる多額の金銭を個人で用意できるケースは多くないといえるでしょう。融資を受けて自己資金を一定程度手元に残しながら上手に収支管理していくと、軌道に乗せるまでの間も安心して事業に集中していけるのではないでしょうか。